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□ コトバ □

星の囁きのように小さな声は
闇にとけることなく いつまでも彷徨いつづける
触れることの出来ない想いは
誰の目にもとまらず その姿を変えてゆく

この世の真実は 偽りだ
蜃気楼のように近付くと消える 儚いものだ

ボクの音がきこえるのは
ボクの他には 誰もいない

2002/04/17








□ 記憶 □

思い出というほど いい加減な過去はない
記憶は都合よく変えられるものだ 真実など関係ない
言葉なんてどうとでも言える 信じるものではない
他人の心は決して知る事は出来ない 見えない
自分自身を騙すのは とても簡単なことだ
人間とは いい加減なものなのだ
自分の世界で生きる
自分の価値観で全てを見る
それが当たり前
信じるものは 自分しかいない

だから……

「愛している」
ふと聞こえるあの声は 幻聴にすぎない
夢と現の狭間で見る胸が温かくなる光景は 単なる脳の暴走でしかない
あれは現実にあったことではない
あれは過去ではない
記憶にはないものは ただの虚像だ

なのに……どうしてだろう

この世に自分を愛している者がいるということを 俺は知っている
声も 名前も 顔も知らない者が 何処かで自分を愛している
絶対にいると確信している
俺の記憶にはない だが いるのだ
この世の何処かに

他人の言葉など信じない
自分の思いなど信じない
なのに…
どうして その者の存在を信じるのだろうか

――君は 誰?


その者を忘れた俺は 今度は一体どんな罰をうけるのだろうか
記憶を無くした罪は 何だったのだろうか…

2002/04/17








□ さようなら □

「愛している」
そう言ったのは嘘ではない。
限りなく真実に近い想い。僕を創る最大の想い。
だけど、それが全てではない。
僕にはいつでも不安が付き纏う。
それを君に言えなかったのは、僕が弱いから。
だから、君は悪くない。
悪いのは僕。
君を愛しく想う思いが高まれば、それに比例するかのように不安が募る。
なんて僕は小さい人間なんだろうね。
なんて意気地無しな男なんだろうね。
……ごめんね、強くなれなくて。
愛している。
これからもずっと、君を愛している。
だけど、もう、限界なんだ。
傍にいられないんだ。

僕を愛してくれてありがとう。
それに上手く応えられなくて、ごめん。
君が苦しむ事を知っていて、こんな道を選んだ僕を、
君は嫌いになるだろうか。
許して欲しいとは言えないけれど、
こんな僕でも願う事が出来るのなら、
君の幸せを祈るよ。
最低な男だけれど、せめてこれだけは想っていたいんだ…。

愛してる。
ありがとう。
そして、さようなら。

2002/04/17








□ 朝 □

ゆっくりと目をあける
汚れの数まで憶えている天井
眠る前に開いていたページのままの雑誌
少し耳につく壁の時計の秒針
今日という一日が始まる
生まれたばかりの太陽がボクを照らす

僕はあと何度
こうして目覚めるのだろう
ここで朝を迎えることが出来るのだろう

目覚めた喜びを後どれだけ感じられるのだろうか

2002/04/26



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