6


 会話をする事なく車は進み、宣言通り有名保育園の駐車場へと乗り入れられる。別段俺としても交わす話などありはしないのだが、ヤクザと沈黙を共有するなど二十歳の子供には予想以上に重く、少しは気遣えよと胸中で詰ってもいたので、水木が車を停めドアを開けた時はホッとした。だが、しかし。
「待っていろ」
「……」
 短くそう言い、俺を残して去って行く男の後ろ姿を、窓ガラス越しに睨む。何だってあの男は、命令しか出来ないのか。せめて、納得するか反論するかの材料を与えるか、もっと説明をしてから行け。こっちは付き合ってやっているのだ、それくらい望んでも罰は当たらないだろう。こんな理不尽な行為を受けるいわれは俺にはないはず。
 なんて居心地が悪すぎるのかと、全ての事が我慢出来ない苛立ちに、俺はじっとしていられずに車を降りた。雨上がりの湿った空気が身体に纏わりつくようだが、車内よりは断然マシだ。久し振りに呼吸をするかのように息を大きく吸い込み、軽く首を回し体を解しながら辺りを見る。俺には見ても良くわからないが、周りに停まる車はみな高級車のようだった。雨上がりのくせに、車体が洗いたてのように綺麗に光っている。
 きっとこれも値が張るのだろう水木の車に凭れ、俺は暫くその場で突っ立ていた。だが、ちらほら行き交う人々の視線が妙に気になり、すぐにまた居辛くなる。俺の年齢では、園児の親としては少し若く、兄弟としては離れすぎているのだから、明らかに場違いなのだ。堪らない。
 保育園は迎えの時間なのだろう。ラッシュは終わっていそうだが、駐車場の車は次々と入れ替わっていく。だが、一向に、水木が戻ってくる様子はない。早く戻って来ないかと、いつまで待たせる気だよと園舎の方を見やり、まるで心細い子供のように待っている自分に気付き俺はギョッとした。
「――冗談じゃないぜ…」
 洒落にもならないと舌打ちを落としながら、俺は車から体を起こす。後からやって来た車が去るのを見送ってから、挫けそうになりつつもゆっくりと足を踏み出した。
 何も、待っていろと言われ、律義に大人しく待つ必要はないのだ。聞きいれなかったからといって、まさか殴られはしないだろう。俺は組織の構成員ではなくただの一般人であり、あくまでも戸川さんに頼まれてここでこうしているのだから、それくらいの判断はあの男でもするはずだ。…多分。
 駐車場から園に向かう途中で幾組もの親子と擦れ違う。軽く会釈を交わしながら見定めた大人も子供も、流石というか何というか、金持ちといった雰囲気を纏っていた。この時間だ。スーツの男性は父親ではなく、運転手なのだろう。…あぁ、やっぱり白い手袋をしているよ、オイ。俺とて裕福と言える家庭で育ったが、それでも全く世界が違う。
 何故こんなところにヤクザが来るのかと、自分以上に場違いに違いない男の事を考え溜息を落とした時、丁度園舎から出て来たばかりの水木を見つけ、俺は思わず立ち止まった。
「……マジかよ」
 意識する事なく零れた呟きは、当たり前だが誰にも届かず、この衝撃を消し去ってくれはしない。
「…………」
 腕に幼い子供を抱く水木を眺め、俺はその場で固まってしまった。ヤクザの癖に違和感のないその姿は、完璧にこの場に溶け込んでいる。そう、男ひとりでは保育園には似合わないだろう。だが、こうして見る限りは、まるでやり手のビジネスマンか弁護士かというような父親だ。水木が放つ鋭さや威圧感はいい様に周囲を騙しており、とてもヤクザには見えない。きっと仁侠映画に出てくるような、それらしい格好をしていたとしても、その筋の者には見えないだろう。裏ではなく表の世界にいる男のようだと、初めて見た時と同じような事を不覚にも今なお感じてしまい、俺は面白くないと盛大に顔を顰めた。ヤクザの癖にと、八つ当たり気味であるのを自覚しながらも、嫌悪が浮かぶ。
 俺が園内に足を踏み入れていたのに気付いていたのだろうか。真っ直ぐと近付いて来た水木は、子供を腕に抱いたまま、俺の目の前で立ち止まった。無視してくれれば良いものを、嫌な奴だ。こんなところで交流を示される身にもなって欲しい。何事かと視線を向けて来る周囲もそうだが、目の前まで来ておいて無言とはどういう了見だ、畜生。
 言葉無く車から出て来た事を非難されている気がしたが、謝りたくはなく俺も口を引き結ぶ。腕に抱かれ興味深げに俺を見下ろす子供が、料亭に来ていた男の子だと今更ながらに気付いたが、そんな事はどうでも良い。
 短いながらも確かに存在した沈黙と睨み合いを打ち切ったのは、相手の方だった。
「……行くぞ」
 俺を短い言葉と顎の仕草で促し、水木は歩みを再開した。ついて行くのは嫌だが、佇んでいる訳にもいかない。だがそれでも、最後の抵抗というように並びはせず、俺は半歩後ろを歩いた。馬鹿みたいだと自分でも思うが、脅されようが威圧されようが、俺にだって譲れないものがあるのだ。
 そんな小さな意地を示している俺を、子供が大きな目でじっと見て来た。眺め返し、この子には罪はないなと考え直し笑いかけると、さっと自分を抱き上げる男の首筋に顔を伏せる。はっきりとした眼差しからは人見知りをするタイプには思えないが、多少恥ずかしがり屋でもあるのだろう。隠れはしても興味は消えないようで、直ぐにまた俺に目を向けてくる子供の仕草は、何ともいえないくらいに愛らしかった。
 戸川さんが父親だと思ったが、こんなところにまで迎えにくるのだから、この子は水木の息子なのだろう。そう考え眺める子供は、確かに整った顔立ちは似ている気がしないでもないが、愛くるしさが強くて正直良くわからなかった。男の子ならば母親の方に似ているのかもしれないなと、視線を外さず観察する俺を、子供の方も視線を外す事なく見返してくる。なかなか気も強そうだ。
「ああ、リュウ。礼を言え」
 息子の好奇心を感じ取ったのか、軽く振り向いた水木は足を止め、子供を腕から降ろしながらそう言った。伸ばされる小さな手を相手にはせず、有無を言わさぬ手際良さで、俺と向かい合うように子供を真っ直ぐ立たせる。
「お前が忘れた、あの玩具の車を届けてくれたのは、この兄さんだ」
 ほらと水木がそう言い頭を突くと、被っていた帽子がずれたが、子供は気にする事なくアリガトウと小さな声で呟いた。余りの可愛らしさに俺は思わずしゃがみ込み、目深になった帽子を直してやる。至近距離で見た子供の目は、濃い茶色ではなく黒だった。吸い込まれそうなくらいに、真っ黒だ。
「どう致しまして。リュウくんは、あの赤い車が大好きなのかな?」
「うん」
「そう。なら、これからは忘れないように気を付けないとね」
「うんっ!」
 何がそんなに小さな子供の心を掴んだのか、元気よく頷いたリュウがニパッと俺に笑いかけてくる。頭を撫でると、小さな手を伸ばし俺の手を握ってきた。
「あれはね、お誕生日のプレゼントで、お父さんにもらったの」
「かっこいい車だったね」
「うん、ボク大好き!」
 そうかと屈託ない笑顔に笑顔を返しながら、水木が動きだすのに促され立ち上がる。いきなり懐かれたが悪い気がするはずもなく、俺は少し体を傾けつつもリュウと手を繋ぎ、男の後を追うよう車へと向かった。
 手を握り並んで歩く子供の、赤のラインが入る紺の制服と横掛けの鞄の名札には、「水木隆雅」と名前が記されている。やはり、水木瑛慈の息子なのだ。正直、俺的には父親は戸川さんの方が良かったな、などと部外者ながらにも思ってしまう。今は似ておらずこんなにも可愛いこの子供が、大人になった時にはあんな風になっている確率が高いのかと思うと、何だか遣る瀬無い気がしてくる。お節介でしかないのだが、先を行く水木の後ろ姿を見ながら、似ないで欲しいなと考えてしまう。顔はどんなに良くとも、あの性格は頂けない。
「あのね、ボクはね、みじゅきりゅーが」
 クイッと腕を引かれ言われた自己紹介に、その意図を察し俺も名前を教えた。
「俺は千束大和」
「チジュカ、さん」
 少し呼び難そうに発音する舌たらずな子供に、ヤマトで良いよと答える。自分の名前もまだ上手く言えない子に、慣れない他人の名は無理だろう。
「ヤマトくん」
 何故に名字はサンで、名前だとクンになるのか。この子供の中には何らかの定義があるのだろうかと首を傾げながら見やった先には、満面の笑顔があった。嬉しげに、何度も俺の名を口に乗せる。それだけで、もう完敗だ。喜んで負けよう。
 こうなれば、クンでもサンでも、それこそチャンでも良いというもので。そもそも何と呼ばれようが問題はないので突っ込みはせず、俺は笑い頷きながら「俺も、リュウくんと呼ぶので良いかな?」と問い掛けた。
「うん、いいよ」
「ありがとう」
「ヤマトくんは、いくつ?」
「俺?俺は二十歳だよ。来月には21才になるけどね。リュウくんは何才かな?」
「よんっ!」
 自信満々に挙手するように手をあげた子供の親指は、宣言通りきちんと曲げられている。その手を取り、俺は両腕でリュウを吊り上げるように持ち上げた。すでに水木が車に凭れ待っているのに気付き、そのまま抱き上げる。
 キャッキャとリュウは喜び、首にしがみついてきた。ムカツク男の子供でも、やはり可愛いものは可愛い。今まで小さな子供と関わるような事があまりなかったので考えもしなかったが、案外俺は子供好きなのかもしれない。
「済みません、お待たせしました」
 思いがけずもリュウに絆されるあまり、不覚にも待たせてしまっていた水木に素直に謝ると、無言で後部座席のドアを開けられた。そのままリュウと一緒に乗り込むと、運転席に座った男が「リュウ、シートベルト」と軽く振り返る。子供相手にでも単語で命令するところが、何とも言えない。親としてはどうだろうか、この素っ気なさは。
「ヤマトくんもね」
「ん?ああ、そうだね」
 慣れた風にベルトをかけるリュウと同じように俺もすると、何やら少し物言いたげな視線を水木は向けてきた。だが、それよりも嬉しげに見上げてくる隣の可愛い視線を、俺は優先する。どうせ、水木の言いたい事など、大した事でもろくな事でもない筈だ。無視をしても問題はないだろう。眼ではなく、きちんと言葉にしない方が悪いのだ。
「さぁ、これでいいかな?」
「よく出来ましたー」
「ハハ、ありがとう。でも、リュウくんのは捻れちゃっているよ」
 小さな身体にまわったベルトを直してやると、先程よりも柔らかい声で礼を言われた。帽子を脱いだ頭をクシャリとかき混ぜながら撫でて応えると、リュウは笑顔を浮かべる。ネコなら喉を鳴らしていそうな御機嫌さだ。
 本当に、なんて素直でいい子なのか。子供の可愛さを知れば知る程、運転席に座る男の血を受け継いでいる事を、俺は勿体なく感じる。
 ヤクザの息子が堂々と有名保育園に通う時代ならば、極普通の一般学生がその子供と仲良くなったとしてもおかしくはないのだろう。しかし、当たり前だが、その親との交流は願い下げだ。ヤクザと親しい付き合いなどしたくはない。
 4才になったばかりらしい子供と他愛ない言葉を交わしながらも、俺は運転席でハンドルを握る男を気にしていた。水木は一体俺に何をしたいのか。まさか、息子の遊び相手を求めていた訳ではないだろう。男の意図が何処にあるのかわからない限りは、俺もこんな風に子供と和んでいる場合ではないのかもしれない。
「今日もね、アイラがリンくんを泣かせたの」
 そうかと、小さな子供の小さな社会に苦笑している場合ではないぞ、俺。
 自分で自分を茶化すように、内心で突っ込みを入れる。だが。
「…ボク、アイラきらい……」
 唇を尖らせながらも視線を落とし、どこか不安げに話す子供を無下には出来ないと言うものだ。
「う〜ん、嫌いか。それはまた大事だなぁ」
「オーゴト…?」
「誰かを嫌いになるのは難しいものだからね、リュウくんは大変なんだなって事だよ」
「タイヘンって……ダメなこと?ヤマトくんも怒っているの?」
 深く考えず適当に返した言葉に、幼い子供は真剣な表情でそう問い掛けて来た。何だと頭を捻ったのも一瞬、誰かに何かを言われたらしい事を察し俺は苦笑する。だから、嫌いと言いつつも、弱気な声だったのだろう。
「もしかして、誰かに怒られたの?」
「…キライって言っちゃダメだって、センセイが……」
「そっか」
 なるほど、保育園の先生か。流石に大人には慣れているようでも、やはりまだ本人自身は幼いのだと俺は妙に納得する。咎められて何も言えなかったのだろう。
「でも、リュウくんには理由があるだろう。友達を苛めるから、アイラちゃんが嫌い。だったら、それはリュウくんの意思だから口にするのは悪くはないよ。中傷ならば、俺も先生と同じように怒るけれどね」
「チューショー?」
「悪口って事だよ」
「…ボク、悪口なんて言っていないよ」
「うん」
「でも、センセイは…」
「人には立場ってものがあるからね。大人は特に、それが強い。自分のものだけじゃなく、他の者のそれも考えないと駄目だから、難しい。上手くいかない時もある」
 小さな頭に手を乗せ撫でるように軽く叩くと、リュウは俯いたまま「…良くわからない」と呟いた。
「実は俺もわからない。だが、先生は間違ってはいないし、リュウも悪くはないと俺は思う。俺が思うだけではどうにもならないけれど、今すぐにどうにかしなければならない事でもないよ」
 益々わからないと言った顔で見上げてくる姿に、ほんの少し俺の中に罪悪感が浮かぶ。正直、自分が何を言っているのか自身でも良くわからない。たとえ本心だとしても、小さな子供に向けるのは、些か勝手な言葉であるとも思う。
 だが、それでも。俺も間違った事は言っていないつもりだ。大層な信念がある訳ではないが、ただ落ち込んでいる子供にその原因となった同じ言葉は向けられない。
「誰が何を思っているのかなんてね、後から気付くものなんだよ。急いで答えを出したら、それこそ間違ってしまうかもしれない。君の意見は間違いではなくとも、真実かどうかはまだわからない」
 友達を泣かせるのは悪いが、それが全てだとは限らない。苛める側には理由があり、苛められる側にも理由があり、保母は子供が知らない何かを知っているのかもしれない。そんな可能性を、幼い子供はまだ見つけられないのだ。大人ならば、それも己の責任であり発言の全てが自分に返っても文句は言えない。だが、子供にはまず、そんな仕組みを示してやるべきだろう。
 答えを決めるのはあくまでも子供自身でなくては、大人が側に居る意味がない。大人が押しつけていいのは、子を思う愛情くらいなものだろう。
 抵抗がないのを良い事に、俺は考え込んでいるのか黙ったリュウの頭を撫で続ける。いつか、同意であれ否定であれ、今の自分の言葉にこの子供が答えを見つけられれば良いなと俺は思う。これもまた、勝手な感情ではあるのだが。
 ふと視線を感じ顔を上げると、ルームミラーの中で男と目が合った。後部座席での会話を水木はずっと聞いているようだが、全く口を挟んではこない。けれど、それがかえって、居心地悪く感じる。昨夜のように憮然としているのではなく、ただ会話を邪魔しないようにしているかのような雰囲気だが、俺の意見は子供はともかくヤクザの男にすれば青臭いものだろう。内心では、鼻で笑っているのかもしれない。そう思うと、喋り過ぎている自分が嫌になる。だが。
 多分、きっと。嫌になるのは、水木云々ではなく、子供に対し上手くやれていない自分を自覚しているからだろう。自信が持てる対応が出来ていたのであれば、水木の目など気にならないはずだ。
 子供と接するのを侮っていた訳ではないが、とても難しいものなのだと、経験をして漸く実感する。当たり前だが、俺はまだ親というものにはなれそうにないなと、自分の力不足を思い知る。
 少しだけ、子供の親である大人の苦労と凄さを知れたような気がした。

 車が向かっていた目的地は、叔母の料亭の倍は軽くありそうな、大きな屋敷だった。敷地内へは乗り込まず、出入口の門の近くで車は停まる。圧倒されながらも、リュウと共に俺も車を降りたが、水木にこのままここで待つように言われた時は正直ホッとした。自宅か組織の本部か何かは知らないが、ヤクザの巣になど入りたくはないので、リュウには悪いが握っていた小さなその手を離す。
「ヤマトくん…」
「またね、リュウくん」
 バイバイと手を振ると、父親に抱え上げられながら、リュウは小さなその手を振り返して来た。根性でどうこうなるものではないが、子供の期待に沿えない自分が少し不甲斐なく感じてしまう。リュウはもっと俺と遊びたいと思っているのだろう。だが、やはり馬鹿でない限りは、何も起こりはしないとわかっていてもヤクザの家には入らないのが賢明だ。誰だって、性質の悪い危険を冒すよりも、小さな罪悪感を選ぶだろう。
「すぐ戻る」
「……」
 そんな宣言は、全く要らない。別に戻って来なくていいから、俺に暇を出してくれ。仕事がないのなら子供と居てやれよと、またもや短い言葉を残して去る男に溜息を落としつつも、その見送る親子の姿は不本意だが微笑ましく感じるものだった。俺は二人が消えた門を暫し眺め、最悪な男でも親なんだなとしみじみと思う。見直すわけではないが、リュウと接する水木は、そう悪いものではない。色々と問題がある男だが、それでも子供にとっては良い父親なのだろう。誕生日の祝いに貰った玩具の車を大好きだと言ったリュウの笑顔を見ていれば、それは疑う余地もないものだ。
 はたして俺は、あの子供のように屈託なく父が好きだと言った事があっただろうか。物心が付いてからの記憶の中では、父にも母にも、そんな感情を抱いた覚えはない。少しだけ、まだ4歳になったばかりの舌足らずな子供を、年甲斐も無く羨ましく思う。
 道で突っ立っていても仕方がないので助手席に戻り、俺は暇潰しに携帯電話を手にした。だが、直ぐにそれを仕舞い、座席へと深く凭れ、深い息を吐く。フロントガラス越しに見上げた空は、幾分か晴れたように思えたが、早くも夕暮れに変わっていた。灰青に紫に、オレンジに赤に白の多彩な空。多分、雨は今日だけで、明日は晴れなのだろう。夕陽が鮮やかだ。
 疲れたというか、眠いというか。何となくする事もないので目を閉じ休んでいると、いつの間にか本当に眠気がやってきた。寝る訳にはいかないので意識は起こしているが、体は一時停止しているとでもいうのか、まどろんでいる感じだ。ヤクザの車の中で何をしているんだろうなと自分で突っ込みつつも、体を起こす気にはなれない。昨日の接触からは考えられない事だが、子供との様子を見て、俺は少し水木に対する警戒を弱めたのかもしれない。
 だからだろう。男が戻って来たのに気付いても、直ぐには起きずにそのまま無防備な姿を晒したのは。
「……寝たのか?」
 水木が声をかけて来たのは、運転席に乗り込み暫く経っての事だった。いいえと、済みませんと応えようとしたが、休めていた体は直ぐには起きる事が出来ず声も出なかった。変わりに、ゆっくりと瞼を上げる。
 目の前に、無機質な目でこちらを見ている水木の顔があった。だが、何故だろうか、驚きは浮かばなかった。それを良い事に、怖さはないその顔をじっくりと眺め、本当に整った顔だなと再度俺は確認する。思ったよりも長い睫に妙に愛嬌を感じたのは、あの子供のせいだろう。リュウの睫も長かった。
「…疲れているのか」
「……いえ、大丈夫です」
「そうか」
 体を起こしかけたところで、男の手に髪を掻き回された。まるで子供のような扱われ方に、不覚にも俺は撥ね除けるのではなく、単純に照れた。絶対に赤くなっているだろう顔を背け、シートベルトを引きながら俯く。……恥ずかしい。
「子守りをさせて、悪かった」
「…いえ。楽しかった、です」
「そうか」
 それは先程と同じ言葉だったが、声の色は違うような感じがした。どんな風に違うのかは巧く言えはしないが、簡単な言葉で表せば、先のものよりも幾分か丸いような気がする。柔らかいとまではいかないその微妙さが、何だかこの男に似合っているようであり、また似合わなさ過ぎるようでもあり、俺はその可笑しさに口許を緩めた。
「息子さん、可愛いですね」
 車を走らせ始めた水木に、俺はそう声を掛ける。だが。
「俺の子供じゃない。リュウは親父さんの子だ」
 どういう事か理解出来ず、俺はただその言葉に首を傾げた。
「オヤジさんって――お父さん…?」
 マジで息子ではないのかと、父親の子という事は兄弟かと俺は驚く。水木の父親とはあの人だよなと考えかけた俺に、運転席から冷ややかな視線が向けられた。
「……親分の事だ」
「…………あぁ」
 はいはい、なるほど。組長さんの事かと、俺は自分がかましたボケに少し気まずさを覚えながら、料亭で会った白髪の男を思い出す。叔母曰く社長さんのあの人は、多分この繋がりなのだろうが、関係あるのかないのか。同じ名前ばかりでややこしい。誰かと誰かがイコールになるのか、どうなのか、さっぱりだ。親分と言っても、親会社子会社孫会社のヤクザ組織の何処に水木が居て何処の組長を指しているのか予想もつかないので、とりあえず誤解した事に対する謝罪を俺は口に乗せるる。
「リュウくんと同じ名前なので、俺はてっきり。済みません」
「俺は水木の養子で、リュウは正真正銘の実子だ」
 俺の謝罪を聞いただろうか。言葉が重なるくらいの勢いで、だから名字が同じだと、血の繋がりはないが書類上は義兄弟だと、真っ直ぐ前を向いたまま水木はそっけなく答えた。
 別段、詳しくなりたくはないのだが。
 組長の養子……。……そうくるか。そんな繋がりなのか。ならば、俺が知る三人以外に「水木」がいないのならば、簡単に関係が見えてくる。あの水木社長が、ヤクザの親分であり、リュウの父親という事だ。そして、この水木は、義理の息子で義理の兄。婿養子といったところなのだろう。だが、しかし。
 こんな事を簡単に俺なんかに話して良いのだろうか。無口の割に、ある意味お喋りだ。パーソナルな部分を、こんなところでさらけ出すとは。やられた俺の方が尻込みしてしまう内容に、意味無く戸惑いを覚えてしまう。
「…親分さんって、『萩森』に来て下さった、あの方ですよね?」
「あぁ、そうだ」
「なら、あの方がリュウくんのお父さんなんですね」
 水木に返事をも求めるまでもなくわかっていたが、そう口にする事で実感が沸く。ああ、そうなんだと、俺はひとりで納得し小さな笑いを落とした。些か歳はとっていても、あの水木氏の方が断然父親らしい。ヤクザの親分だとしても、少なくとも隣の男よりはまともだろう。少し顔を会わせただけだが、無暗に人を威圧するような男ではなかった。先程見た水木とリュウの微笑ましい姿を忘れたわけではないが、俺はあっさり意見を変え、白髪の男を推す。
「……何だ?」
「いえ、何でもありません」
「…そうか」
 今度の「そうか」は、どこか面白くないかのような声音だった。不思議とそれは、機嫌が悪く怒っているようなものではなく、剥れた子供のような可愛さが感じられた。
 不意に、昨夜戸川さんが言っていた言葉を思い出す。見た目とは違い、素朴な奴だと。不誠実な態度はとらず、きちんと話に耳を傾けるだろうと。自分の価値を少しわかっていない、不器用な奴だと。よくこの男の事を知っているのだろう彼は、そう水木の事を言っていた。
 今なら少し、それがわかるような気がする。
「水木さんは、お子さんいらっしゃるんですか?」
「……何故」
「いえ、…別に他意はありませんけど……」
 気を緩めてしまった俺は、どうやら調子に乗り、気に入らない質問をしてしまったらしい。僅かに顔を顰め、はっきりと不満を眼に浮かべた水木が、運転の合間に俺を見る。話の流れで聞いてみただけだが、どうやらしてはならなかったようだ。
「済みません。リュウくんが可愛かったので、子供はいいなと思って、水木さんはどうなのかなと……余計な事ですね失礼しました」
 何故か今までのように何を怒っているんだとムカツク事はなく、俺は慌てて言い訳を並べた。拙かったのかと、純粋に不躾な事を聞き悪かったなと思う。
 だが。
「……言ったはずだ。名字で呼ばないでくれ」
「……」
 ……指摘箇所はそこですか、おい。
「…他に呼びようがないですよ」
 俺だってさっきそう言ったぞ、と。養子でも何でも、それがあんたの名前だろうと、俺は負けじと言い返す。しかし。
「無理にデスマスを使う事もない」
「……」
 …人の話を聞きやがれ。あんたこそ無理をしてでも、まともな言葉を使ってくれ!
 そんなに俺の言葉遣いは駄目なのか、白々しいのかと、俺は顔を顰めながら呻いた。ムカツキ過ぎて、最早デスマス云々ではなく言葉自体が出てこない。
「…どうした?」
 ……どうしたではない。あんたの頭がどうなっているのかが、今は問題だ。
「気分が悪いのか…?」
 気分なんて、とっくの前から悪い。良い筈がない。聞かなくてもわかる事を聞くのは、嫌がらせ以外の何ものでもないだろう。折角こちらが意識を変えた途端にこれだ。二十歳の学生の純真さを踏み躙りやがって…非道人間。
「おい」
「……目上の方に、友達にとるような態度で接する事は出来ません。しかし、確かに感情を完璧にコントロール出来る程大人でもないので、水木さんには不快を与えてしまったのかもしれません。その点は謝ります。済みません、以後気を付けます」
 奥歯を噛み締めながら吐き出した言葉は、自分でも泣きたくなるようなものだった。健気とさえ言えるだろう。言葉も誠意も伝わらない相手にキレない自分を、自分で褒めたいぐらいだ。
「…ですが。それでも過ちを犯す時もあるでしょうから、これからは嫌味を言う前に先に指摘して下さい。お願いします」
 以後も、これからもないだろう。もう二度と会うものかと思いつつ、馬鹿にするのも大概にしろよと俺は言い返してやる。何が、名前で呼ぶなだ。デスマスを使うなだ。気に入らないからといってやり返す箇所がセコ過ぎる。
 腹が立つのなら、余計な口は開くなと押さえ付ければ良いのだ。そもそも、付き合えと命令しなければ良かったのだ。
 水木が何を考え、何を俺に求めているのか、さっぱりわからない。戸川さんに会う為の間繋ぎ的役割なら、俺なんかは適当に放っておけば良いのだ。互いに不快を感じるだけなのだから、会話などしなければ良いのだ。ヤクザのくせに、小さな事で学生をいびりにくるな。
「怒っているのか?」
 信号で車を停めた水木が、俺を振り返りそう問い掛けてきた。人の神経を逆撫でしておきながらのそれに、思わず舌打ちを落とす。だが。見返した男の表情が、黒い目が、馬鹿にしたものではなく本気で不思議に思っているかのようなもので、俺は予想外のそれから直ぐに顔を背けた。
 横顔に注がれる男の視線が、痛い。
「……別に、…怒っていません」
 完璧に、俺は負けてしまったのか。水木の視線をどうにかしたくて開いた口から零れたのは、そんな言葉だった。
「…そうか」
 また「そうか」だ。これしか言えないのか、こいつは。使い方すら間違っている。自分から聞いておきながら、俺の答えなどどうでもいいかのような短い言葉。関心のなさを表す言葉は、今この会話で使うべきではないものだろう。
 だが、それでも。
 それでも、無言ではなく言葉で返すだけマシなのかもしれないと、そう思えてしまうのだから始末が悪い。声に出して返事をしている労力を、いつの間にか認めてしまいそうになっている。
 すっかり毒されている自分に俺は気付き、深い溜息を落とした。この男の毒など、何よりも性質が悪そうだ。一体これ以上、何が起こるというのか。どんな症状が出るのか。今すぐ、解毒剤が欲しい。
 明かりが目に付き始めた街の景色を見ながら、戸川さんは助けに来てくれないのだろうかと、俺は切にそれを願った。


 次は何処へ向かっているのか。訪ねる前に目的地に着いたらしく、気付けば車はビルの駐車場に入っていた。地下もあるようだが一階のスペースに駐車し、水木はドアを開ける。
「行くぞ」
 バタンとドアの閉まる音がやけに響く。勝手に行けよと眉を寄せつつも、俺はその音に促されるよう車を降りた。水木の短い言葉は、聞き慣れてしまえば命令ではなさそうな気もしてくるが、明らかにそれに近い強制力を持っている。俺が降りるのを待ち、確認してから歩き始めるのを考えれば、無理に腕を取り引きずる事をしない程度には猶予を与えられているのかもしれない。だが、それでもやはり、強引なのには変わりなく。
 ヤクザのそれは、絶対である。
「……何処に行くんですか」
 今更遅いとわかりつつも、前を行く男の背に問うと、上だとの返事がやってきた。短い言葉もそうだが、ふざけきった内容だ。上だろうが下だろうが、全く答えになっていない。
「ここは何処ですか」
 これで住所など口にしたら、蹴りの一発でも見舞って逃げてやるぞと、俺は盛大に顔を顰めながら訊いた。そう、苦虫ではなく、カメ虫を噛み潰したかのような顔をしていただろう。有り得ない苦汁と衝撃に破壊されかけた俺を、振り返った男は何をどう思ったのか。
「……」
「……」
 水木は暫く無言で俺を眺めた後、長い溜息を落とした。住所を言われるより、ムカツク行為だ。人にカメ虫を食らわせておいて、整った顔のまま息を吐くとはふてぶてしい。
「……俺のマンションだ」
 明らかに増した俺の顰め面が役に立ったのか、水木は重そうながらにも口を開いた。始めからそう言えよと胸中で突っ込みながら、駐車場に入る前に見た建物を思いだす。会社ビルなどではなくマンションらしいが、絶対「高級」がその前に付く類いのものなのだろう。
 ただの管理者か所有者かは知らないが、何だってそのマンションなんかにと考えはじめた俺の思考を中断するかのように、水木は進めた足をすぐに止め背中を向けたまま言った。
「……乗るか乗らないか、決めろ」
「……?」
 エレベーターだろうその前で、カードを取り出し操作をする水木を、俺は数歩離れて眺める。どこまでもふざけた男だと。今まで無理に引っ張りまわしておきながら、こんなところでこんな風に委ねるなど、最低だ。頭が腐っている。
 そう思いながらも、俺は自分が勘違いしている事に気付く。
 暗証番号を打ち込んだのだろう、直ぐに扉が開き、水木は箱の中に乗り込んだ。このエレベーターは、特定の人間しか利用出来ないのだろう。ならば、答えはひとつだ。
「ここは、貴方の部屋があるマンションなんですか?」
 そう、「俺のマンション」とは、そう言う意味なのだ。だから、水木は俺にどうするか訊ねたのだろう。当たり前だが、リュウの誘いに乗らなかった俺が、水木の部屋を訪れたいと思う筈がないと本人もわかっているのだ。
「貴方の部屋に、俺は招待されているんですね…?」
「……」
 無言は、肯定でしかなかった。
 予想した通りらしい事態に、俺は驚くよりも、ただ単純に頭を捻る。何故俺が水木の部屋に…?
 第一、断られるとわかっていながら、何故この男は俺に選択を与えるのだろうか。目的が何か知らないが、今までのように強引につれていかないその理由がとても気になった。乗るか乗らないか、その選択で一体何を計るつもりなのか。わからない。
 それに。
「本当に、俺に……」
 俺に断る権利が与えられているのだろうか。無言の水木に、そんな考えが浮かぶ。問われたからと言って相手はヤクザなのだから、とても怪しいものだ。ならば、結果は決まっているが、俺の意見を聞きたいと言う事だろうか。
 しかし、自分を見下ろしてくる無機質な目を真っ直ぐと見上げ、それはないなと俺は即答えを出した。俺の意見など、この男は興味がない筈だ。では、何故なのか。全てがわからないまま、疑問は始めに戻る。堂々巡りだ。水木の意図が見えなさ過ぎる。
「……俺に、何だ?」
 閉まらないようドアに手をかけたまま、水木は途中で切った俺の言葉を促してきた。こんなところではなく、もっと違うところで丁寧さを発揮して欲しいものだ。俺はそう思いながらも、律義に答える。乗りませんと、即答して立ち去れないところが俺の欠点だと、自分の首を締めるのかもしれないとわかりつつ。
「俺に選ばせて、貴方は良いんですか?」
「…どういう意味だ」
「貴方は何かがあるから、俺をここまで連れて来たんでしょう?」
 そう思い信じくらいには、俺は水木を下種だとは思っていない。人としておかしいところは沢山あるし、ヤクザなのだから信用もしていないが、リュウに対して見せた態度はこの男の偽り無い姿なのだと思える。だから、部屋に上がるかどうかは兎も角、話をするのは悪くはないと思う。
「今のままなら、俺はこれには乗らないですよ。貴方の部屋に行く理由がないし、何も言われないと勝手に想像してしまい怖くて逃げたいとさえ思う。こんな俺に、選択をさせるんですか貴方は。俺の答えは誰がみても明らかでしょう。それは貴方もわかっているはずだ。なのに、それでも訊くという事は。水木さんもいい加減この接触を終わりにしたいと思っているという事ですか?」
 散々振り回しておいて、ウザくなりここで切り捨てようというのかよと、俺は表情を変えない男をあえて睨んだ。何を考えているのか知らないが、俺はなにもわからない無能な餓鬼ではないのだというように。そして、こんな事をするのなら始めから構うなよというように。
 俺との差から考えても、多分185前後の身長だろうが、その雰囲気から190はありそうに感じてしまう。そんな水木を見上げ続けるのは、思う以上に精神力が要った。だが、逸らす事はしなかった。視線を外した瞬間、何もなかったかのようにまた強引に連れて行かれそうな気がしたからだ。
 きっと、この男は今、欝陶しいと思っているに違いない。気紛れで伺ったはいいが、予想以上に細かい事を言う俺に辟易しているに違いない。今にも、前言撤回し、やりたいように事を進めようと隙を狙っているのかもしれない。
「何故、訊くんですか?」
「理由を話せば、部屋にくるのか?」
 話すうちに苛付いてきたのか、突っかかるように問い掛けた俺の言葉に、水木は静かにそんな言葉を落とした。予想外のそれに、俺は見事に怯む。
「……行きません」
「なら、どうしたら乗る?」
 水木の左手が不意に伸び、俺の右腕を掴んだ。逃がさないようにではなく何かを望むように、力が加えられる。痛くはない。だが、とても重い。
「引くのは、簡単だ」
「…ならば、引けば良い」
「……引きたくはない」
「……」
 それは、この状況で、俺に自ら乗れと言う事なのか。それをしたら、俺は自分の言い訳を全てなくすのかもしれないというのに、なんて残酷なものを突きつけてくるのか。
 水木が俺に委ねながらも望んだものが何だったのか知り、俺は愕然とする。お前の意思で俺の部屋に来いと、水木はそう言う意味で言ったのだ。なんてふざけきっているのだろうか。冗談ではない。
「……」
「…………」
 暫く至近距離で睨み合った結果、水木は俺の手を放した。視線を逸らすよう、目を瞑る。
「…後から戸川が来る。俺の部屋が嫌ならエントランスで待っていろ」
 玄関の暗証番号はと言葉を紡ぎ始めた水木を、俺は遮った。単語ではないが、それでも言葉が少な過ぎる。口数が少ないのでも、気がまわらないのでもなく、ここまでくれば態とではないかと疑いたくなる。もし馬鹿学生の相手など本気で出来るかと手を抜いているのだとしたら、一発殴っただけでは到底気がすまないだろう。
 これが性格ではなく俺をあしらっているだけなのならば、その口摘んで捩じってやるぞ。何が、待っていろだ、馬鹿野郎。何故に最初から今の言葉を口にしないんだ!
「ちょっと待って下さい。それは、戸川さんとここで待ち合わせているという事ですか」
「ああ」
 男の返事に、今度は俺が瞼を伏せた。今更何を言い出すのか、コン畜生。
 迷う必要などないのに、それが胸に浮かぶ。関係ないと立ち去っても俺に非はないだろうに、躊躇う気持ちの方が大きい。水木は兎も角、戸川さんから逃げる形は避けた方がいいような気がしてくる。
 電話での約束だとか、昨日世話になったからとかではなく。何故か俺は、戸川さんに会わねばならないように思えた。確かな理由など全くないのだが。
「……貴方の部屋には、誰かいますか?」
「否、いない」
 俺の質問の理由を察してか、「お前には何もしない」と水木は言葉を付け加える。本当に、こんな時だけこの男は……憎たらしい。
「…安全を、保障してくれますか」
「ああ」
 何て答えようが、保障などあるはずがない。相手はヤクザなのだから。
 だけど、それをわかりながらも俺は足を一歩踏み出した。エントランスで待つなど出来るわけがないだろうと、自分に言い聞かせもう一歩進む。
 俺の後ろで扉が閉まる音が上がり、直ぐに小さな箱は浮上を始めた。


2005/09/30